「仮想的有能感」という視点

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自己肯定q

これも、仕事でお世話になっている企業の書棚で発見、お借りしました。

他人を見下す若者たち」。タイトルが、ありがちな若者気質・文化の批判を連想させましたが、内容はよく整理されていて一読に値します。「仮想的有能感」と「自尊感情」をもって、若者だけを説明しようとすると無理があるような気はしますが。

同書にある「仮想的有能感」というのは、著者による造語で、「他者軽視を通して生じる偽りのプライド」を意味します。

「仮想的有能感」の強い人は一般に、勝手に他者の能力を軽視し、それは無意識的に生じる自己防衛機制とも考えられ、認知的なものというよりは感情的なものであると著者は述べています。

人間は本来、常に自分を高く評価していたい動物であり、自分よりも優れた人物について知りたがっているというよりも、自分よりも劣っている者に関する下方比較を求めるものであり、自尊感情が脅威を感じたときにその傾向が強く発動するもののようです。

同書に紹介されている「仮想的有能感尺度の項目」というのが興味深いので、引用させていただきます。すべて、「1:まったく思わない」から「5:思う」の5SDで評価されます。

(1)自分の周りには気のきかない人が多い
(2)他の人の仕事を見ていると、手際が悪いと感じる
(3)話し合いの場で、無意味な発言をする人が多い
(4)知識や教養がないのに偉そうにしている人が多い
(5)他の人に対して、なぜこんな簡単なことがわからないのだろうと感じる
(6)自分の代わりに大切な役目をまかせられるような有能な人は、私の周りに少ない
(7)他の人を見ていて「ダメな人だ」と思うことが多い
(8)私の意見が聞き入れてもらえなかった時、相手の理解力が足りないと感じる
(9)今の日本を動かしている人の多くは、たいした人間ではない
(10)世の中には、努力しなくても偉くなる人が少なくない
(11)世の中には、常識のない人が多すぎる
(P.133)

同書は「仮想的有能感を持つ人の特徴」として、以下を挙げています。
@共感性が乏しい。共感性とは、相手の立場に立って考えることができ、相手の感情を共有できることを意味する。共感性が低いからこそ、他者軽視しやすいと考えられる。
A友人関係が狭い。身近な他者である友人が多ければ、自然にコミュニケーションも多くなり、他者と照応させて自分を見ることができ、現実的判断ができるものと考えられる。
B仮想的有能感の高い人は、友人関係に不満が多い。家族関係についても不満が多い傾向が見られる。

著者によれば、「仮想的有能感」と「自尊感情」はまったくの「別もの」。
「自尊感情」とは、相対比較によって「誰々よりもよい」というものではなく、絶対評価により、「自分はこれでよい」と感じるもの(「満足」)であるといいます。同書では、「仮想的有能感(過去の自己経験に拠らない)」と「自尊感情(過去の自己経験に拠る)」は違うものであるが、どちらも「自己肯定感」であるとしています。

そして、「自尊感情」が高い人には「失敗経験」が少なく、「仮想的有能感」の高い人は、「失敗経験」のうちでも「友だちに無視されたこと」「先生から注意を受けたこと」「周りの大人に信用されなかったこと」いう質問項目への回答において、正の相関関係が見られたと述べています(つまり、「仮想的有能感」の高い人は、「友だちに無視された」「先生から注意を受けた」「周りの大人に信用されなかった」経験を多く/強く保有している、ということ)。

…とくるならば、否定的動力によって形成された「仮想的有能感」を多く保有する人を、真の意味での「自己肯定感」があるとみなしてよいのか?という疑問が、私には湧いてまいります。

さて、「有能感」について4象限に分けた分類が紹介されています。それをご覧になるのが、最も分かりやすいと思われますが、図の紹介は控えます。ご興味があれば、直接書籍をご覧ください。

簡単に4タイプを見てみますと、こんな感じです。

A.仮想型…「仮想的有能感(他者軽視)」が高く、「自尊感情」が低い。他人にも自分にも不満なタイプ。海外マンガ「ピーナッツ」に出てくる「ルーシー」タイプ。失敗の原因を、自分ではなく他人に帰する傾向。

B.全能型…「仮想的有能感(他者軽視)」が高く、「自尊感情」が高い。他人に不満だが、自分には満足している。言ってみれば、尊大なタイプ?

C.自尊型…「仮想的有能感(他者軽視)」が低く、「自尊感情」が高い。自分に満足しているが、他人を低く評価したり、軽蔑したりしないタイプ。

D.萎縮型…「仮想的有能感(他者軽視)」が低く、「自尊感情」が低い。他人に不満はないが、自分には不満なタイプ。海外マンガ「ピーナッツ」に出てくる「チャーリー」タイプ。何かが起こったとき、「自分のせいだ」と思いがち。

こうしてみると、Cの「自尊型」が、最も健全な「自己肯定感」の保有者のように見えますね。

>> 「自己受容」あっての「自己否定」