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1980年代の後半、男性向け下着市場の構造を変える製品が登場した。カルバン・クラインのボクサー・ブリーフである。
ブリーフのホールド感を持ちながら独特のこっ恥ずかしさから人々を解放した製品は、市場で圧倒的な支持を受けるとともに多くの追随者を生み出すことにより短期間で一つのカテゴリーを形成するにいたった。
若年層のなかにはズボンをずり下げつつパンツのゴム部分にあるカルバン・クラインのロゴを見せる、という意味不明の風習が発生したことも記憶にあたらしい
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CK(カルバンクライン) |
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カルバン・クラインのボクサー・ブリーフはあらゆる売り場で一押しの売れ線となり、デパートの下着売り場でカルバン・クラインのコーナーを持たない店舗は無いと言ってよい。製品導入期から一貫したパッケージのグラフィックも製品イメージを保つことに寄与している。
ただし製品の品質に関しては評価の分かれるところで、あまりにもソフト感を追求したやわらかい布地は比較的早期に伸びを迎える、という難点を持っている。伸びたボクサー・ブリーフの着用時における形姿の情けなさは言語を絶するものがあり、しかも突如として尻が破ける、というベーシックなオチで生涯をおえることもしばしばである。
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BASIC |
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探求者たちも時にショップ巡りに疲れグンゼ、BVD,福助などの大手下着メーカーの製品に舞い戻る。
これらのメーカーは日本下着界の牽引者を自認し、その品質において一定以上の水準をクリヤーしているのは疑いようのない事実である。当然、大手メーカーは多くのデザイナーズ・ブランドの下着をOEMで生産しており、誰もが知らず知らずのうちに彼らの掌上で踊っている可能性すらあるのだ。
もちろんこれらのメーカーも自社ブランドでボクサー・ブリーフを展開している。しかし一旦、探求の旅に出た者にとって、思春期の美化しようのない記憶をいやおうなしに呼びさますこれらのマークを臍下に装着することにはどうしても抵抗を生ずるのである。 |
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RL(ラルフ・ローレン) |
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ラルフ・ローレンの下着は通常品として流通するものの中で最高水準の品質を持っている一つである。
生地は適度な厚みをもち形態が崩れにくい。トランクスはカッティングの上手さか、水準を超えたホールド感を提供し、ボクサー・ブリーフは長期間にわたって当初のテイストが持続する。
ラルフ・ローレンの国内生産ラインの製品は大手メーカーOEMの集合体だが、すくなくとも下着に関する製品計画は賞賛に値するといってよいだろう。ただし他の多くのライセンス商品と同じく若干価格帯が高めに設定されていることは事実である。 |
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SHAPE-P |
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1990年代以降、男性向けにも尻の形を整えるシェイプパンツ的な製品がラインナップされるようになった。これらは己の尻の形態を特に重視しない一般人にとってはあまり意味を持たない製品群だが、強力なストレッチ性をもつこれらの製品がアイテムのホールド感において最高水準にあることは疑う余地がない。
アイテムと脚部が完全に分離されるため、白癬菌の跋扈に悩む一部消費者にとっては「風通し」を売りにするトランクスよりも支持されているという報告もある。
ただし、内臓類が下垂し、下腹部に脂肪が吸着しはじめた着用者にとっては、これらの製品はあきらかに苦痛の発生源であり、下半身の血行を阻害したあげく、歩行への意欲を失わせ、さらなる運動不足へと着用者を追い込む負のスパイラルの契機となる恐れすらある。 |
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DESIGNER'S
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多くのデザイナーズ・ブランドがOEMによってアンダーウェアを提供する。ただし上記のラルフ・ローレンを除いて特筆すべき品質を誇る製品にはなかなか巡り合えないのが実情である。
たとえばポール・スミスブランドのトランクスは布地のプリントには「らしさ」が見えるものの品質、テイストにおいてあまり高い評価は与えられない。衣服の中で「踊る」という挙動すら示している。デザイナー・ブランドのトランクス着用者のあいだに「まろび出」の事故が多く報告されているのも偶然ではないだろう
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BENETTON |
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ベネトンのボクサー・ブリーフはカルバン・クラインにそのテイストにおいて類似性がある。妙にソフト感がつよいためCKのような末路を着用者に予感させるが、意外な腰の強さを見せ、ソフトながら長期にわたってそれ以上のへタレを拒否する、という独特のライフサイクルを実現している。
ニット部分や足周りにリブ機能がないためいささかビラビラした印象はぬぐえないが、イタリアならではの洒脱なアプローチといえよう(企画・製造は日本)。 |
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無印良品 |
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無印良品のアパレルは、特別なデザインを必要としないニット類などが、価格に比した品質の高さによって充分な競争力を持っている。
ただしボクサー・ブリーフに関していえば「水準」のレベル。はき心地はやや力強さに欠け、あまり遠くない将来における「ヘタレ」化が懸念される。旅の途中でやむなく立ち寄った凡庸な宿とでもいえようか。
トランクスは2枚900円のパッケージで提供されているという。これもホールド感には大きな期待をもたないほうが賢明だろう。 |
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VISARUNO |
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VISARUNO。明らかにデザイナーズ・ブランド風のアプローチで製品展開がなされているが、一つの大きな疑問がある。それはパンツ類以外のアパレル製品をいかなる場所でも見かけることがない、という事実である。と思っていたら、中野を聖地とする大規模小売業者がこのブランドのキャンペーンを実施中との情報が入った。
モデルには真菌類(キノコ)をこよなく愛するというピースフルな俳優が起用され、少なくともこの中野系小売店においては総合アパレルブランドであることが確認された。ボクサー・ブリーフはリブ機能のないルーズ系で、いまひとつ生地に腰がないのが難点である。 |
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BURBERRY |
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最近では、老舗アパレルがターゲットをシフトしてモード化したり、ユースマーケットに進出を図るケースは多い。コートやタータンチェックで知られた老舗、バーバリーもその代表的な一つ。タータンのスカートをアムロにはかせたのも昔、今やトラディショナルの片鱗も感じさせないモードな服をもラインナップするブランドに変貌した。
もっともトランクスはモードのラインとは無縁の世界にあり、老舗下着メーカー、福助が提供する。落着いたチェックのパターンは、老舗バーバリーのイメージそのままだ。
しかし、兵士が塹壕で着用したという伝説を持つコートのヘビーデューティーな精神はシルクロードのどこかに置き忘れてしまったようである。生地は腰がなく、トランクスのホールド感に作用する足部分の長さも通常品と変わらない。これをはいた兵士が落着いて銃口の狙いを定められるかはいささか疑問である。 |
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旅のゆくえ |
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一説によれば男子のアイテムの位置は加齢とともに下垂するという。すべての肉体のパーツが重力との戦いに敗北する運命にあることを思えば、この俗説もあながちでたらめとはいいきれまい。
振り返れば、温泉地や銭湯で見かけた下着姿の老人たちのアイテムはもはや胴体の真下にその存在感を示し、いささかも前方方向へのベクトルを見せていなかったようにすら思える。
いや、それはひょっとして老人用オムツを着用している男の姿だったのか。
トランクスを巡る旅の終着駅が「これで積極的に出かけられる」老人用オムツだとしたら・・・・
けだし旅というものは長ければ長いほどその終着は物悲しいものになりがちである。疲弊し、この先希望を持つにはあまりにも多くの現実を見てきてしまった探求者、その下垂しきったアイテムをやさしくホールドするガーゼ質の生地と高分子吸収体・・・
しかし終着駅はまだだいぶ先にある。時には真菌類(キノコ)の力でも借りて、希望を持って次の目的地へと向かおうではないか。 |
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